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(大野語り)
なごみさんの前であそこまで言うことないのに。たぶん今までの俺なら立ち直れなかった。
東さんはハイパー酷いよな……と思いながら、夜道をずんずん歩いた。終いには走りたくなり、全速力で駆け出した。
夜風が頬をすり抜けて、走ることに集中する。体が跳ねる度に心も晴れていく様だった。
どれくらい走っただろうか。
疲れたので近くの公園に入り、ベンチへ腰掛けた。
ここがどこかも分からない開放感が更に気持ちを軽くする。
キラキラと夜空に星が瞬く下で、店に残してきたなごみさんが気になった。俺のことで待鳥先生から責められていないだろうか。待鳥先生は嫉妬深そうだ。泣いていないといいけど、たぶん泣いてる。
あの人は泣き虫だから。
俺が慰めてあげられたらどんなに良かっただろう。
「……走る…とか…反則。はぁはぁはぁ」
見知らぬ公園で暫く座っていると、突然誰かが近寄ってきた。変質者かと構えたら、それは息が上がって劣化した東さんだった。
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