なごみと3年間

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(なごみ語り) デスクに就いて、一息つく間も無く白勢(しらせ)社長が出社してきた。 慌ててコーヒーと水をお盆に乗せて持っていく。 「おはようございます。ご機嫌は……悪そうですね。大丈夫ですか?」 顔色も悪く、だるそうだ。こんなになるまで飲まなければいいのに、室長じゃないけど注意をしたくなる気持ちも分からなくはない。 「……ああ、うん。ありがと。朝イチで申し訳ないけど1つお願いがある。」 白瀬社長は、受け取ったコーヒーを一口飲むと安心したように話し始めた。 僕は胃薬と水をそっと横に添える。 「なんでしょうか。変更可能な予定はないです。寝たい、とかは無しにしてください。」 社長は、はははっと乾いた笑いをするも、目が死んでいる。いつもの鋭い眼光に命が宿っていない。 大分弱っているのだろうか。 「なんかもう、和水君は俺の性格を熟知してるね。勿論寝たいけど……あのさ、東……いや秘書室長の誕生日っていつか知ってる?」 室長の……?誕生日は知らない。 今年35歳になるしか分からない。 「………すみません。すぐには分からないので、調べる時間をいただけますか。」 「なるべく早く頼むよ。東には内密にしてくれ。まかり間違っても俺が知りたがってるとか伝わることのないように。じゃあ、今日の予定を確認しようか。」 東室長の誕生日……と忘れないように手帳にメモする。何に必要なのかは聞かなかった。上司の私情にはよっぽどのことがない限り立ち入ってはいけないからだ。 それに、私情じゃないかもしれない。 社長は時々室長を呼び捨てにするが、昔一緒に仕事をしたことがあるのだろうか。室長のことを語る社長は、なんだか楽しそうだ。 今日のスケジュールを確認していると、社長室がノックされた。 たぶん経理部長だろう。 室長に伝えておいたので、通してくれたようだ。僕は分厚い経営会議資料を社長に手渡して、ドアを開けた。 長い1日が始まる。
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