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(大野語り)
嬉しくて舞い上がったまま、なごみさんと駅の改札口で別れた。疲れて眠い筈なのに頭は異様なくらい醒めていた。
久しぶりに会ったなごみさんは、優しい雰囲気に包まれていて、笑顔を見せられた時には鼓動が早くなり、くらくらした。
たぶんその瞬間、もう一度恋をしていたと思う。
3年前の格好悪い色々な思い出も、好きだった感情も全部が俺の中に流れてきて、涙が出そうになった。
向こうでは無理矢理に忘れようとして、仕事に没頭した。だが、そう長くも続かなかった。気晴らしに女の子と付き合ってみても、いざ身体の関係を迫られると、俺の下半身は何故か反応しなかった。
それに何より、彼女達を恋愛対象として見れなかった。男としてどうなのか、相当悩んだが、答えは出なかった。
なごみさんが、俺をずっと好きだったと言ってくれた。上気せた頭でふらふらと家に帰り、兄貴を無視し、襖を開けてベッドへダイブした。
顔がにやけるのが止まらない。
幸せ……なんだけどさ。
うーん……と何か忘れてる気がする。
俺って、自分の気持ちを伝えたっけ……
普通告白されたら返事をするものだよな。
やばい。返事をしていない。
舞い上がって、余韻に浸りすぎていた。
飛び起きて携帯を確認すると、12時を過ぎていたが、躊躇いもせず画面をタップした。
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