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(渉語り)
「あゆむ君のことであなたと知り合いになれて、本当に嬉しかったです。…………昨日は調子に乗って俺の部屋まで連れてきてすみませんでした。付き合おうとか軽く言う言葉じゃないですよね。俺、全部忘れますから。だから……嫌いにならないでください……」
ああ……悪いのは全部僕なのに、彼に気を使わせてしまっている、セックスをしようと誘ったのは僕だし、誘惑したのも僕だろう。
僕をいいと思ってくれたから誘いに乗った。普通の男なら健康的な思考だ。彼だからこそ心を許したのだと思う。まどか先生だから甘えてしまったのだ。
どうしたらいいのだろう。
「………ごめん。僕の方こそ理不尽に怒って申し訳なかった。次は……飲みすぎないようにするから、またご飯に行こうか。君とは、そこからゆっくり始めたい。関係を急ぐのは僕の性に合わないんだ。勿論、嫌いになったりしないよ」
「…………はい。よろしくお願いします。手始めに携帯番号から教えてください」
「あれ、交換していなかったっけ?」
「してませんよ。渉さんはガード固すぎです」
まどか先生は、僕の言葉を聞いて何も反論せず、イタズラに笑った。
僕は彼と、恋愛または友情をゆっくりと築いていきたいと思った。その先は何があるかは分からない。性格や価値観が不一致で友達止まりかもしれないし、それを超える何かがあり恋人になるかもしれない。
部屋に飾ってある丸いパンヒーローのぬいぐるみもにっこりと笑った気がした。
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