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(渉語り)
洋ちゃんが大野と付き合いだしたと、風の噂……鬱陶しい患者の榊さんから聞いた。
あの2人はかなり前から好き同士だったから、僕はもう気にしない。やっとくっ付いたかと思ったくらいで、素直に洋ちゃんの幸せを祈った。
まどか君とは相変わらず、ご飯友達のままだ。時々食事に行ったり、彼が遅番の時は川沿いで待ち合わせて一緒に帰ったりしていた。
あの件から彼は何も言わない。だから僕も言い出せなかったが、本当は少し彼のことが気になりだしていた。
「渉さん、今日は神社のお祭りって知ってました?今から行きませんか。うちの園児さんもいるかもしれない。みんなすごく楽しみにしていたんですよ」
7月の終わりの蒸し暑い夜だった。遅番のまどか君と川沿いを並んで歩いていた。
どこからともなくお囃子が小さく聞こえており、子供のはしゃぐ声も辺りに響いている。
まとわりつくような湿った空気に汗が滲んだ。
「わ、お祭りなんだ。どうりで浴衣の人が多い筈だね。行ってみようか」
僕達2人は誘われるように神社の階段を上った。
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