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(渉語り)
彼と全く音信不通になってから2週間が過ぎた。
最初は強がっていたものの、洋ちゃんの元カレ諒君が訪ねてきた辺りから雲行きが怪しくなり、失恋以上の痛手を負っていた。
他人の恋愛を見ていると、自分も無性に温もりが欲しくなる。大切な物を失って、ずぅーんと心に重りが乗っているようだ。
人というものは現金で、いつもある時は気にもしないくせに、目の前から無くなった途端執着心が増す。
神社で拒絶され会えなくなってから、まどか君に会いたくて堪らない。もっと早く自分の想いに気付いて伝えておけば良かったと、後悔の念は僕を底の無い沼へ沈めていった。
「待鳥センセ、今日こそはすべて吐いてもらいます。治療院が陰気臭くてキノコが生えてきそうですよ。落ち込み過ぎのセンセイなんて見ていられません。洗いざらい話すまで治療院を開けませんから、覚悟して下さい」
午前の診療が終わり、お昼過ぎの休憩でアスカちゃんに捕まった。入り口に鍵を閉められて、通せんぼをされる。顔が物凄く怖い。
「ここに座って何があったか話してください。ちょうど2週間前ですよね?」
「えっ、アスカちゃん……なんで知ってるの?僕は何にも言ってないけど……」
彼女は得意げな顔で鼻を膨らました。
可愛い顔が台無しな気もしたが、怖いので何も言わずに座る。
「毎日見てるんですから分かりますってば。もう観念してください。このモテモテ王子め。萌えますね」
「は、はぁ……?」
モ、モテモテ王子………って何?
どう足掻いても逃げられる状況では無かったので、言われた通り観念して話すことにした。僕のセクシャリティについて、彼女は全く偏見を持っていない。気心が知れた友達に話しているような錯覚を覚えながら、順に話をした。勿論、まどか君と酔った勢いの諸々は省いたけど。
彼女は半笑いで聞いた後、最後には眉間にシワを寄せた。
「うーん………と。ツッコミどころ満載な男
達ですが、まず、1番悪いのは待鳥センセイです。ハッキリしない、流される、鈍い。イライラします。センセイは1番誰が好きなんですか?まどか先生、新城さん、歩君……それとも元カレさんですか?」
アスカちゃんに僕が悪いとハッキリと言われた。分かってるけど、口に出されるとかなりショックだ。
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