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(渉語り)
「これが転園先です。どうするかは待鳥センセイが決めてください。どの選択をしても後悔をすることが無いように。陰気臭さが明るくなることを祈ってますから。あと、結果だけは絶対に教えてくださいよ。ほら、しっかりして」
「ん、ありがとう……」
小さなメモをアスカちゃんがくれた。隣の町にある保育園の名前が記されており、ここからだとバスに乗らないといけない距離だ。
どうするか考えながら奥で昼食を摂ることにした。アスカちゃんは外出したので、僕は1人で買ってきたサラダとおにぎりを食べる。ここ最近は、お弁当も作っていない。すべてコンビニで済ませていた。
僕らしくない、とアスカちゃんは言う。
自分のことながらそう思う。いつもと違う感触に驚いている。
会いに行こうか……こんな僕に愛想をつかしているかもしれないが、まどか君に会いたかった。ストーカーみたいに待ち伏せをして、引かれたりしたら2度と立ち直れない。
迷いがぐるぐると頭の中を回っている。昼食も途中に僕は机に突っ伏してうな垂れていた。こんなに悩んだのは、榊さんと別れる時以来だ。
「………すみませーん、あのー……」
遠くの方で声が聞こえた。男性の声だ。耳に覚えがある。誰だろうか。
お客さんかもしれないので、重い体を引きずって受付へ行くと、懐かしの大野がいた。
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