優しさで溢れるように

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(東語り) 航さんの部屋は相変わらず物で溢れていた。城に引き続き船舶にもはまりだしたので、客間は様々なパーツで散らかっている。最近購入した机の上は、組み立て途中の帆やら甲板やらが散乱していた。申し訳ないが、片付けずにやりっぱなしは見るに耐え難い。 明日、大掃除を無理矢理にでもやろうと誓った。 「俺を落ち着かせてくれるんだろ?征四郎は何してくれる?」 航さんの表情がにやにやしており、あんなことを言うんじゃなかったな……と後悔しながら彼をぎゅっと抱きしめてみた。 もう一緒に暮らし始めて半年が経つ。 素顔の彼は以前と全く変わっていなかった。日々愛しさが募っていく自分を感じずにはいられない。俺は航さんが好きだ。 1日1日を共に過ごす喜びは何ものにも代え難かった。 「あのさ……そんなんじゃ落ち着かないんだけど……こっち向いてよ」 「え?ぁ、んっ……慌てないで。はぁ……ふぅ……もう、ダメです」 航さんが俺の襟を強引に引っ張り、口を吸うようにねっとりとキスをしてきた。 欲しいのは分かるけど上階には客がいる。 酔っ払い達だから寝ているかもしれないが、これでは俺が行為に没頭できない。 航さんが俺のカーディガンをするりと脱がせた。シャツ越しにひんやりとした冷気に触れて鳥肌が立つ。 「……征四郎、襖を見てごらん。盗み見している奴がいる。決して目を合わせてはいけないよ。彼はこの昂りを二階に持って帰るだろう。どうなったか明日の朝に聞いてみたいものだ。ふふ」 抱きしめるふりをして、航さんが俺に耳打ちをしてきた。腕越しにチラリと視線を投げると、確かに大野が見ている。 一緒に暮らしていることがバレた今、こういう関係を隠している訳ではなかった。それでも身の毛が立つくらいの恥ずかしさが駆け巡る。全身の毛穴が緊張によりキュッと締まった。 「航さん……やめません?大野が見てる」 「止める訳ないだろう。こんな状態でお預けとか、俺は怒るぞ。気にすんな」 部下のなごみに見られたら、死にたくなっていたと思うが、大野ならいいか。 所詮大野だしと思うことにする。 見上げると、航さんからちゅ、ちゅ、と沢山のキスが降りてきた。それが心地良くて次第に大野の存在が背景になる。どうでもいい。彼らにはお見通しだろう。 気が付いたら彼は居なくなっており、航さんによって半裸にされていた。次は、俺のパンツに手をかけようとしている。俺からも何かアクションを起こそうとしたら、強く手を払われた。今日は彼が攻めたい日らしい。 しょうがなくされるがままに寝転んだ。 万年床ではないが、休みの日は布団を敷きっぱなしだ。そろそろ2人の寝室を設けた方がいい気がしてきた。 「大野君……行っちゃったね。これからが本番で、1番可愛い征四郎が見れるのに」 航さんは、すりすりと半勃ちの俺のものに頰を寄せて、口に入れた。生暖かい口内で更に硬度が増し、航さんの舌遣いに酔いが残った頭が上せていくのが分かる。 「全然可愛くっ……ありませんから……ぁ……はぁ……くち……ぁぁっ……んん……」 わざと唾液の音を出して、首を上下に動かすところが興奮を煽る。舌を巻きつけるように吸われて頭が快感に痺れてきた。 間も無く射精を迎えると、航さんが嬉しそうに口内の白濁を見せ、ごくんと飲み込んだ。 「なっ……汚いですから。飲まないでください」 「征四郎のだと思うと不味く感じない。いつもの君の真似。俺だって君を愛したい。挿入だけでなく愛撫で気持ちよくなってもらいたいんだ。征四郎は受け身でいて欲しい」 ゆっくりと、もつれ込むように布団で抱き合った。航さんに身を委ねることにする。 幸せな時間に小さく笑みが溢れた。
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