会社の後輩

3/7
前へ
/388ページ
次へ
(なごみ語り) 夕方、内線が鳴った。 ディスプレイに出た番号に見覚えがある。朝もここに電話した気がするのは気の所為だろうか、頭の片隅から彼の存在が戻ってきたようだった。 「なごみさーん、助けてください。」 開口一番、泣きそうな大野君の声が聞こえてきた。 この時間の彼からの電話はろくなことがない。たぶん……頼られて助けて、残業決定だな。今日中に帰れるかどうかも怪しい。だって、自分の仕事も定時に終わりそうにないのだから。 「パソコンが壊れました。うんともすんとも言いません。画面が青いです。」 「えええっ……………分かった。今から行くよ。待ってて。」 あぁぁ、何故僕に言うのか。 僕は大野君の部署へ向かうべく席を立った。 大野君所属の法人営業第2部は僕の部署より上の階にある。苦手な人が多いから普段はあまり近づかない。 営業成績のいい人は一癖も二癖もあるのだ。 僕が行くと、同期の寺田に声を掛けられた。 こいつも……僕は苦手だ。 「和水、久しぶり。相変わらずあんな所で1日中パソコンいじってんの?」 「…………………」 返す言葉がもったいないので無視をした。 俺が一番の上から目線に辟易する。いつも得体の知れない自信に満ちており、胸焼けがしていた。寺田に関わるとロクなことがない。 「あ、なごみさーん、こっちです。」 僕に気付いた大野君が手を振って呼んだ。 助かった。寺田の相手は嫌だ。 大野君の所に行こうとすると、寺田に手を引かれた。 「今度飲みに行こうよ。同期で集まろう。」 「ははは、そのうちね。お前も忙しいだろうに、無理しなくてもいいよ。」 「別に、無理なんかしてないぞ。色々情報交換しようぜ。それに…………」 寺田が何か言いかけていたが、時間の無駄なので、スルリと足早にかわした。
/388ページ

最初のコメントを投稿しよう!

316人が本棚に入れています
本棚に追加