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(大野語り)
俺がこちらへ戻る際に、本社ではなく支店を選んだのは、派閥やしがらみに嫌気が差したからで、その時は最善の選択と思われた。だが、最善と思われたものは、一瞬で後悔へと変わってしまった。
社内でなごみさんに会えないのだ。
仕事と恋愛は別モノで、寧ろ切り離して考えなければいけないと頭では分かっていても、会いたいものは仕方ない。
しかもなごみさんは俺のいない間、東さんに引き抜かれ秘書室へ異動になっていた。
細かい気遣いが出来る人だから、秘書には向いていると思う。見た目も申し分ない。
だけど、秘書室は気軽に入れない場所だ。
天上人は怖いし、あそこへは近寄りたくない。そんなとこに付き合いたての恋人を1人にしておきたくないのが本音だ。
数日後、俺の支店で急ぎの稟議案件があり、社長がいるうちに決裁を貰わないといけない事態になった。慌ただしく書類を作成し、誰が本社へ持ち込むか相談している中で、運良く外回りから戻ってきた俺が通りかかった。
たまたま目が合った俺に、支店長が書類を持っていくように依頼したのだ。
しかも直帰していいとのこと。
社長に決裁を貰うには、秘書室へ行く必要がある。俺は喜んでその役を買って出た。
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