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1.
塔の中ではすべてのものが常にディヴァーギルの監督下にあり、ほとんどの場合にはナディーラが傍にひかえているものの、ルカーにもいわゆるひとりの時間というものは存在した。
その日もひとり、私室で寝台に腰を下ろし、ネファヴィリーの記録媒体を見ていた。
ネファヴィリーの光の文字は人類のものよりも何倍もの速さで情報を伝達するが、それでも未だ、元人間のルカーがネファヴィリーの大いなる智恵のすべてを習得するには至っていなかった。そのため、空いた時間にはそれなりに勉強もしている。
ふと、ナディーラが部屋に入る気配がして、顔を上げた。
黒い獣のすがたの彼は足音もほとんどさせなかったが、通信能力の届く範囲であれば存在を認識するのは容易だった。
「終わったのか?」
「はい。無事に」
「それはなにより。ご苦労さま」
「いいえ。どういたしまして」
「おいで」
「はい」
ナディーラは軽やかに寝台に乗り上げ、横になったあるじに寄り添った。
「塔の保守点検・整備の間はおれだけ暇だ。すこし仲間はずれの気分になるな」
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