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たとえばときどき隕石が衝突したり、氷の火山の噴火があったりなどすれば、彼らの塔も意外と傷む。しかし大抵は、その都度ディヴァーギルとディが補修しているため、塔の運用に支障が出ることはない。
それでも何百年かに一度くらいは、大がかりな保守点検と整備を行うことになっていた。今日はまさにその日だった。
「そうか。疲れたと言ったのなら、存分にねぎらってやろうと思ったのだが」
「おや。なにをしてくださるのですか?」
「おまえがして欲しいのならば、如何ようとでも」
「そのようなことを、不用意におっしゃるものではありません。私が無体な要求をしたらどうするのです」
「もちろん、相手は選ぶ。おまえ以外には言わない。よもやおまえが、おれを害するようなまねはしないだろう?」
「もちろん、そのようなこと決していたしますまい」
「ならばよいだろう」
「それでも、絶対、ではありませんから」
「心配してくれてありがとう。だが大丈夫」
ルカーは、ふざけて牙をむいてみせる。
「おまえを傷つける力があるのはおれのほうだ」
黒い獣は彼の主人の身体を組み敷くと、鼻先をすり寄せた。
突き出されたくちびるを舐める。
少年がくすぐったそうに笑って口をひらくと、舌を滑り込ませ、上顎を撫であげる。
差し出された舌をからめとって、おたがい夢中で吸った。
「舌、熱いな」
息をつく合間に、ルカーがつぶやいた。
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