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「和音、椿がほんとーにごめん!」
「…もう気にしてないから大丈夫だよ」
教室は授業だったから終わる頃に教室に入り、担任に怒られるかと思ったが担任は凪沙の顔をチラッと見るだけで何も言わなかった。
担任までも、もう凪沙の顔色を伺っているんだな。
まだ入学して日は浅いのに、凪沙がクラスの中心になっていた。
凪沙は俺と同時に入ってきていたが、周りの生徒達も俺の姿が霞むのか俺を見る人はほとんどいなかった。
俺は本当にここにいるのかな。
唯一見てくれたのは風太だけで、それだけで自分がいるような気がしてホッとした。
風太はきっと椿くんの言葉に俺がショックを受けたと勘違いしているのだろう。
…言葉よりも椿くんの視線が怖かった。
昔のトラウマは俺が気付かない内にどんどん膨れ上がっていた。
でも、まだトラウマを誰かに話す勇気はない。
いつか、俺が大丈夫になったら風太に話そう。
あの同級生達と風太は違うんだ、だから大丈夫…大丈夫。
俺は椿くんが悪いんじゃなくて、お腹が痛くなったんだと下手な嘘を付いた。
嘘を付くのが苦手で、バレバレなのは自分でも分かっている。
それでも風太は何も言わずお腹の心配をしてくれた。
今度は俺が罪悪感で風太に謝り続けて風太が慌てるという逆の立場になった。
先生に怒られて、やっと自分の席に戻った。
休み時間になり、教室に椿くんが入ってきた。
俺は風太のところに居て、今日は何処で食べるのか話し合っていた。
いきなりの事で無意識に足が後ろに下がっていた。
もうお腹は大丈夫だと風太に言ったから二度も同じ事は言えない。
椿くんも風太に会いにきたんだ、俺が居たら嫌だよな。
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