第1話

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ーーー 次に目を覚ました時は夕焼けに照らされた天井だった。 どのくらい眠っていたんだろうと保健室の壁に掛けられた時計に目を向ける。 もうとっくに下校時刻が過ぎていた。 かなりの時間眠っていた事に血の気が引いた。 勢いで起き上がり頭がガンガンと痛む。 頭を押さえてベッドの横を見ると鞄とプリントが置かれていた。 プリントを掴み見ると、入学式に配られたであろう注意事項や部活の事などが書かれていた。 岸くんが持ってきたのだろうと思い、プリントを折り曲げて鞄の中に突っ込みベッドから降りる。 仕切りのカーテンを開けると、優しそうなメガネを掛けた40代の女性が椅子に座ってなにか書いていた。 その人以外には誰もいないから岸くんは帰ったのだろう。 保健医の先生は、カーテンの音に気付き顔を上げる。 「あら、もういいの?よく眠れた?」 「はい…あの、此処にもう一人背の小さい子が来たと思うんですが」 「岸くんね、さっきまでいたんだけどもう遅いから帰らせたわ、君も早く帰りなさい…家でゆっくりと休むのよ…誰かに迎えに来てもらう?」 「い、いえ…ありがとうございました」 両親は海外転勤だし迎えに来る人がいないから首を横に振り、先生に頭を下げてから保健室を出た。 部活の生徒が数人いるだけで、ほとんど廊下にはいなかった。 今朝はあんなに賑やかだったのに寂しいものだ。 連絡先を交換してないから明日直接岸くんにお礼を言おう、そう思い下駄箱に近付く。 下駄箱を開けると、靴の上に手紙が置いてあった。 普通の男子高校生ならラブレターだと思い浮かれるのだろう。 でも、俺はその白い封筒が不気味でしょうがなかった。 この学園に俺と同じ中学の生徒はいないし、入学式に出ていないから手紙なんて送るわけがない。 知り合いといえば岸くんだけど、岸くんなら用事があったら保健医の先生に伝言を伝えると思う。 そこで思ったのは隣の下駄箱と間違ったという事だった。 封筒を取り、裏をひっくり返しても宛名も名前もないから分からない。 誰かに聞くわけにはいかない、きっとラブレターだと思うから… とりあえず手紙を出した人が気付くように背伸びをして下駄箱の上に置いた。 俺はその後何事もなかったかのように靴を履き歩き出した。 後ろから変な視線を感じて振り返るが、誰もいなかった。
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