第1話

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「ももちゃん、かくれんぼしよ?」 その言葉はもう何回聞いただろう。 かくれんぼが大好きな友達は毎日かくれんぼをしたがる。 他の遊びには全く興味がない様子だった。 理由を聞くと「ももちゃんを見つけるのが楽しいの」と言う、変わった友人だ。 しかし、二人だけでかくれんぼのなにが楽しいのか理解出来ない。 そんなのすぐに見つかるに決まっている。 かくれんぼは大勢で遊んだ方が楽しいに決まっている。 友達はクラスで人気者で男女関係なく友人が多い。 当然といえば当然だ、だって友人はさらさらの痛んでいないクリーム色の髪に人形のように整っている顔だ…確かロシア人と日本人のハーフだと言う。 勉強もスポーツも出来る、そりゃあ人気者にもなれる。 誰もが羨ましがる、全てを持って生まれた子だ。 それに比べて自分は勉強もスポーツも出来ないし、明るくもなく交友関係は物凄く狭い…おまけに平均的な顔。 なんでそんな自分と友達になったのかは忘れてしまったが、きっと理由なんてないだろう。 そして友達が沢山いるのに何故か冴えない自分と二人だけで遊びたがる…決まってかくれんぼ。 一度他の遊びを提案したら即却下された。 そして今日もまた遊びに誘われた。 ランドセルを滑り台の上に置き、公園でかくれんぼをした。 鬼を決めるじゃんけんで友達が鬼になった。 じゃんけんが弱いのかいつも自分は隠れる側だ。 鬼ばかりだと飽きるかと思って一度隠れる側を譲ったけど見つけるのが好きだからと言っていた。 遠慮してると思っていたが、とても嬉しそうにしていた。 彼にとって、見つける事に意味があるような…そんな気がした。 この公園は一通り隠れたからどれもすぐに見つかる気がする。 友達は見つけるのが上手くてすぐに見つかるから毎回悔しい思いをしていて今日は負かしたいと思っていた。 公園から出なければ何処に隠れててもいいルールだからもう少し奥の方に隠れてアスレチックの中に身を潜める。 外から丸見えだが、しゃがめばどうにか分からないだろう。 少し友達が歩いてくるのが見えたら別の場所に隠れよう…我ながら名案だと思った。 ジッと身を潜めていたら、ポンポンと後ろから肩を叩かれた。 明らかに早すぎる、10秒数えてから来たのかと疑いの眼差しで振り返る。 するとそこにはサングラスにマスクの怪しい男が立っていた。 男は息遣いが荒く、逃がさないように腕を掴んできた。
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