第1話

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あれから不審者の話題を一度も出していない。 あの頃、帰り道で一度だけ警察に言うのかどうするのか友達に聞こうと思った。 その時の感情が抜け落ちたような無表情な顔が恐ろしくて話題に出すのをやめた。 あの不審者がどうなったかは、分からない。 それから友達が「ももちゃん、かくれんぼしよ?」と誘われたが不審者がトラウマになり断った。 初めて、かくれんぼを断った。 友達はもう一度同じ事を繰り返した。 さすがにイライラして友達がいないのに「別の子の家でゲームするからもうかくれんぼなんてしないよ!」と言った。 友達は目を見開き固まっていた。 自分と違い友達が沢山いるんだから、その子達とかくれんぼした方が楽しいに決まっている。 そして、友達が多い子の恨みを買う意味を翌日嫌でも知る事になった。 本当の意味で一人ぼっちになった。 今まではプリントを配る時とか教科書を忘れた時とか一言二言話すのに無視をされた。 今まで友達がいなくても平気だと思ってたが、とても苦しかった。 友達は相変わらずかくれんぼに誘う、それが不気味でしょうがなかった。 友達がなにかしたのは明らかでそんな子と遊ぶほど馬鹿ではない。 断ると友達は「…ももちゃんが知らない男に汚された…僕のももちゃんが」とよく分からない事を言っている。 それから友達はかくれんぼの誘いをやめて「誰のお家に遊びに行ったの?」としつこく聞いてきた。 誰の家にも行ってないし、嘘だって言うとなんか自分が可哀想な奴に思えてずっと黙っていた。 それから友達がどうなったか分からない、その後すぐに転校したから… 友達と離れる事が出来て、心の底からホッとしていた。 そして高校生になると同時に両親は海外転勤に行き、英語が出来ないから一人暮らしを始めた。 平和だった、相変わらず人見知りで友達はいなかったがいじめられるよりはマシだった。 まさか、アイツがいるなんて思わず高校生活を楽しみにしていた。
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