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黒髪眼鏡の少年は重いため息を吐いた。
それだけで、ビクッと身体が反応してしまう。
風太だけが、俺達の間にある空気に気付いていなかった。
俺に対して分厚い壁を作っているように感じる。
怖かったけど声を振り絞って、風太に聞いてみた。
「風太、その人は?」
「あぁ!コイツは僕の幼馴染みの松田椿、さっき一緒になったから連れてきた!」
「…いい迷惑だ」
椿と呼ばれた少年は本当に嫌な顔をしていて俺から目を離した。
風太の友達なら大丈夫だと言い聞かせる。
凪沙みたいなのは稀だから怯えてたら何も始まらない。
もしかしたらまた友達になってくれるかもしれない。
自分を変えるために一歩前に踏み出した。
椿くんに向かって手を差し伸ばす。
長かったのか短かったのか、沈黙が包み込む。
風太も紹介したから二人を見守っていた。
向こうばかりが知っていたら不公平だと口を開いた。
「は、初めまして…桃宮和音です」
「……桃宮?」
椿くんは一瞬驚いた顔をして、すぐに表情を変えた。
さっきよりも眉を寄せて、顔をしかめてこちらを見ている。
凪沙に感じた怖さとは別の怖さだ。
凪沙というより、俺を見る周りの人の目のようだ。
俺の昔のトラウマを呼び覚ますような…そんな敵意に満ちた目。
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