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なにかしただろうかと考えるが、初めて会ったから何も思いつかない。
握られる事のない手をそのまま降ろす。
やっぱりこんな暗い奴と友達になりたくないよね。
悲しくなるが、仕方ないと心の中では諦めていた。
大丈夫、慣れてるから風太は気にしなくていい。
風太と仲良くなって、調子に乗っていたのかもしれない。
風太が椿くんの脇腹を肘でつき椿くんは風太を睨む。
俺のせいで仲がいい二人を悪くしたくない。
どう喧嘩を止めたらいいのか分からず、小さい声で風太を呼ぶが風太には届いていなかった。
風太の腕を軽く掴むと、やっと気付いてくれて俺の方を見ていた。
でも喧嘩を止めてくれるんじゃなくて「大丈夫だから」と一言言うだけだった。
二人の関係は初めて椿くんを見た俺には分からない。
再び椿くんの方を向いて、その空気は全然大丈夫ではなかった。
「僕の友達にそんな態度取らないでよ」
「お前、こんなのと友達なのか?」
「なんでそんな事言うの!?」
椿くんは軽蔑した顔でこちらを見る。
口にはしないが、俺が悪いと言われているようだった。
昔虐められていた事を思い出し、気付いたらその場をUターンして走った。
耐えられなかった、心が限界だと悲鳴を上げていた。
また俺は、あの目から逃げ出した。
走った事が原因ではない心臓がバクバクとうるさい。
風太の声を遠くで聞きながら学園とは反対方向に走り出す。
友達を置いて逃げるなんて、ダメだよな…俺は…
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