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息が苦しくなり、足を止めた。
アパートの前まで帰ってきてしまい、罪悪感で部屋には入らずアパート前をウロウロする。
どうしよう、学校サボっちゃった。
今まで病気以外で休んだ事がなかったのに…
遅刻でもいいから今から行こうかな?と考えていたら声が聞こえた。
それは俺がよく知る声だった。
声はアパートの裏庭から聞こえてこっそりと覗く。
そこには城戸さんの姿があった。
すぐに城戸さんの前に行こうとするが、いつも優しい城戸さんとは違い眉を寄せて怒ってる顔だから足を踏み出す事はなかった。
「いい加減にしてくれ!お前には付き合ってられない」
どうやら電話をしているらしい。
揉めているのか、大きな声を出していた。
あの温厚な城戸さんを怒らせる相手、いったい誰なんだろう。
聞いちゃいけないって分かってはいるが、気になってしまい足が動かなくなる。
城戸さんはアパートの壁に寄りかかる。
下を向き表情が分からなくなる。
でも、声が…身体が…とても震えている。
「もう別れよう、そうすればお前も自由だ」
どうやら恋人と電話をしているらしく、冷たく言っているが本人は恋人の事をまだ好きなのか悲しそうな感じがした。
これで終わりなのかと思ったが、まだ言い争いをしていた。
和音はこれ以上はダメだと思いそっとその場を後にした。
恋人が居た事ない俺には何故城戸さんがこんなに怯えているのか分からなかった。
きっと大人にはいろいろあるのだろう。
歩きながら時間を見るとため息が出る。
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