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「昼休み、会いに行こうかと思ってね」
「…え?」
つい立ち止まり後ろを振り返ってしまい、凪沙は嬉しそうにこちらを見ていた。
やっと見てくれたと口には出さないがそういう顔をしていた。
振り返ったのは興味ない感じだったのに意外だなと思っただけ…
もしかして桃宮がももちゃんと思い始めたのだろうか。
確かに珍しい名前だから、その可能性は十分にある。
俺も、ずっとももちゃんと呼ばれていて勘違いしていただけなのかもしれない。
俺がいなかった時に出会った子をももちゃんだったと勘違いしただけだ。
俺をももちゃんと思わなくなった事はいい事だ。
でも彼にとってはいい事ではない様子だった。
どちらが本物のももちゃんなのかは凪沙しか分からない。
ずっと俺をそう呼び執着していた凪沙を見ると、あまり喜ぶ事ではないのかもしれない。
凪沙が他の誰かに俺のようにするという事になる。
怖いからって人に押し付けるのは良くない。
誰かが俺みたいに傷付いて、怖い思いをするかもしれない。
グッと手を握りしめて、凪沙から少し目線を外し口を開いた。
まだ面と向かって話す勇気はないから、これが俺の精一杯だった。
俺ではないのともう一人の桃宮くんも違う事を言わないといけない。
じゃあ誰がももちゃんなのか聞かれたら答えられないけど、凪沙の執着をやめてほしい。
凪沙にとって、今のままでいいわけがない…執着は人を狂わせる。
俺と桃宮くん、その二つを合わせて俺が考えた答えは…
「ももちゃん…なんて、何処にも…いなかったんだよ」
「……」
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