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凪沙が無言で俺を見つめていて、心臓が飛び出そうなほど怖かった。
ももちゃんがいないと分かれば、ももちゃん探しはしなくなる。
凪沙には悪いけど、ももちゃんは凪沙が作り出した幻覚だったんだと言った。
俺も桃宮くんもももちゃんじゃない、誰もももちゃんじゃないんだ。
凪沙がなにか反論するかと思ったけど、凪沙は何も言わなかった。
睨まれているわけではないのに、肌に突き刺さる視線に震える。
それが余計に責められているように感じた。
なにかを考えていたのか、凪沙はしばらくの沈黙の後静かに言った。
「ももちゃんはいるよ、絶対に…今に分かるから」
凪沙は何をしようとしているんだ?今に分かるって何の事だ。
ももちゃん探しはもうやめさせようと思っていたのに、余計俺に恐怖を抱かせる結果になってしまった。
凪沙に何を言っても、もう気持ちが変わる事はないだろう。
俺の言葉は無駄に終わった。
凪沙のなにがそんなに積極的に行動させるのだろうか。
再び歩き出すと凪沙も付いて来る。
学園まで一緒に登校するつもりだろうか、こんな事誰かに見られたらと思うとゾッとする。
凪沙の周りにいる人達は派手な人が多いから地味な俺と一緒にいたとなると…想像しただけで怖い。
そして、どうなるのか凪沙も知っているのがタチが悪い。
でも、同じ学校だから一緒に行っても可笑しくはない。
誰かに言われたら、偶然だと言えば納得してくれる。
自分に言い聞かせていたら、ずっと横から凪沙の視線を感じで震えた。
「安心してよ、隣のクラスの桃宮はももちゃんじゃないから」
凪沙は確信したようにそう言った。
今はそっちの事を心配しているわけではないが、それも大事だと思い直した。
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