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交流はないが、噂は聞いた事がある。
確かにクラスの女子が王子王子はしゃいでいたのを思い出す、その時は話を共有する友人もいなかったから深くは知らないし興味もなかった。
あんな事、二度と起きたくなかったから顔がいい人は男女共に避けていた。
もしかして彼が要中学の王子?
姿を見る勇気がなくて確認していないが、まさか近くにいたのだろうか。
今ほど友達がほしいと思った事はないだろう、そうすれば名前だけでも分かったのかもしれないのに…
こうなる前にいくらでも対処する事は出来た筈だ。
彼が要中学にいるならまた引っ越したのにと後悔する。
耳をすませてみると彼女がいるという声が聞こえた。
昔を知っているから、とても驚いた。
そこで一気に冷めた。
何やってるんだ、俺は…
彼が変だったのは小学生の時で、あれから何年経ってると思ってるんだ。
もう大人に近付いているわけだし…俺の事なんて忘れてるだろうと思った。
その証拠に誰とも関わらなかった彼からしたら耳を疑う話ばかり周りがしている。
全て周りの話を信じるのはどうかと思うが、こんなに知らない彼を聞いていると全て嘘だとは考えにくい。
彼女がいるなら俺に執着する事もないだろう。
なんか自意識過剰すぎて自分でも嫌になる。
俺も忘れて、過去に囚われるのは止めた方がいいよね。
教室に向かおうとホワイトボードから離れると声が聞こえた。
「ももちゃん」
その言葉を聞いて心臓が飛び出るかと思った。
桃宮だから「ももちゃん」、安易なあだ名だが小学生の時はそれが特別のように感じていた。
その一言で一気に記憶の底の暗い記憶が蘇ってくる。
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