第2話

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幼馴染みと言っていたから、普通の友達より絆があるんだろう。 幼馴染みか…普通の幼馴染みはこんな感じなんだろう。 凪沙が異常なだけだよね。 昔から凪沙と喧嘩なんかした事がなかった。 凪沙は俺がする事全てを受け入れて、笑っていた。 トラウマになる前は凪沙の事を優しいと思っていた。 でも、今思うと俺は凪沙とこうして喧嘩をしたかったのかもしれない。 他の友達と喧嘩をする事はあった。 その時凪沙は必ず俺の味方になった、何も俺の話を聞いていないのに相手が悪いと言っていた。 さっきまでムキになって言い合いしていた友人も、凪沙が言っている事を言い返す事はしなかった。 凪沙が全て正しいと言っているような異常な光景だ。 それから、俺と喧嘩する人は誰もいなくなった。 俺と喧嘩をすると凪沙に嫌われると… まるで腫れ物のように遠ざかっていくのが分かる。 子供の時の俺にはそれが耐え難いものだった。 凪沙をわざと怒らせようとした事もあった。 でも凪沙は怒らなかった。 俺がほしい相手は何でも許してくれる人じゃない、対等に喧嘩が出来る相手だ。 他の人には怒るのに、俺には怒らないのはなんでか。 お母さんが言っていた、叱るのは愛情なんだと… 凪沙は俺が嫌いだから怒らないのか。 凪沙の笑みが機械のように冷たく、生きている人間には見えなかった。 何を思って俺と喧嘩をしないのか、それを知っているのは凪沙だけだ。 そして短い休み時間は終わり、椿くんは隣のクラスに帰っていった。
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