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それがたとえ恐怖という感情であっても嬉しい。
俺という沼に引きずり込んで、息も出来ないくらい包み込んであげる。
「…ふふ」
「何?なんかいい事あった?」
「………別に」
この場にいる誰にも関係ない話だ、割り込まないでほしい。
イヤホンの中でも外でもいらない雑音が聞こえてくる。
まぁ、ももちゃんの声を聞くには誰かがいないと聞こえないんだけど。
俺にはあまり話してくれないから寂しい気持ちがある。
昔はあんなに嬉しそうに俺の名前を呼んでいたのに。
その時から、俺はももちゃんを独りぼっちにしたかった。
だって、俺以外がももちゃんに話しかけるのは耐えられない。
それは教師も同じだ、誰だって他人がももちゃんに話しかけていいわけがない。
俺だけのももちゃんなのに、なんで皆分からないんだろう。
だから俺は、昔からかくれんぼが大好きなんだ。
小さな箱の中に隠れているももちゃんを見つけたら俺のもの。
箱から出さないで、奥に奥に埋めて全身で守りたい。
それはかくれんぼでなくてはいけない、鬼ごっこではダメだ。
昔の俺は体力がなくて、ももちゃんに追いつく事が出来なかった。
遠くに離れてしまう背中を見ると、絶望感で消えてしまいたくなる。
ももちゃんに捕まえられるのは嬉しいけど、追いかけるのは嫌いだ。
今なら体力はあるが、捕まえられなかった時を考えるとやりたくない。
かくれんぼなら、見つかるのも見つけるのも好きだ。
俺はずっと待ってるよ、ももちゃんがもう一度見つけてくれるまで…
あの日のあの場所で、ずっとかくれんぼを続けている。
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