2708人が本棚に入れています
本棚に追加
ももちゃんと呼んでいたのは彼だけだったが…
心の何処かで彼じゃない別人だって思っていた。
別人なら彼女をそう呼んでも偶然で終わる。
…そうであってほしいと願っていた。
でも心がざわつく、視界が歪む…手に汗を掻く。
「って彼女を呼んでるんだって!」
「キャー!!私も呼んでほしい!」
そう女子達が続けて、呪文のように別人だと唱えて校舎の中に入った。
彼女を「ももちゃん」と呼んでるのも別人の証拠だ。
だって…昔の友達のあだ名で彼女を呼ぶなんて可笑しいだろ…
名前がたとえ似ていたとしても、俺を忘れていたとしても無意識に避けるものだ。
全てが偶然なんだ、彼と同じ名前も…全部。
そう思っとかないと昔一人ぼっちになったトラウマがまた思い出しそうで頭を振る。
教室がある三階の廊下を歩いていたら、ポンッと肩を叩かれ大袈裟にビクつき振り返る。
まさか、と思って冷や汗が流れたがすぐに気持ちが落ち着いた。
そこには見知らぬ少年が目を丸くして立っていた。
可愛い顔をした少年に一瞬昔の彼に面影が重なるような気がしたが、すぐに全くの別人だと理解した。
正直彼の方が人間離れした美貌だった…あんな顔芸能人でも見た事がない。
だからこそ、こんなに恐怖を抱いているのかもしれない。
「ごめん、驚いた?」
「あ、いや…何の用ですか?」
人と話すのが苦手でオドオドとしながら話す。
だいたいの人はテンション下がるみたいで二回も同じ人から声を掛けられた事がない。
それに顔がいい人とはあまり関わりたくはない。
早く終わらせたいと口にはしないが、雰囲気を出していた。
それなのに彼はしつこすぎて、初めてあんなに話しかけられた(ほとんど一人で喋ってたが)
彼はどうやら鈍感なようだ。
最初のコメントを投稿しよう!