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俺が何も話さなさすぎて、口を閉ざしてしまった。
少年は俺のビビりは自分のせいだと思ったのか落ち込んでいた。
裏表がなさそうな悪い人には見えなかった。
とはいえ会ったばかりで何も分からないというのも事実だ。
少年のせいではないと言いたいが俺は口に出す勇気がなく、もごもごとしていた。
こんなんだから、俺はいつまでも成長が出来ないんだ。
グッと手を握りしめて、声が出なくても口を開いた。
なにかを言う前にすぐに少年は立ち直り俺に向かって笑みを向けた。
ころころ表情が変わる子だなと、少年の第一印象に思った。
「僕、田舎から越してきて友達がまだ一人もいなくて…友達になってくれる?」
「…え、でも…俺」
笑顔でもこんなに面倒な奴、もう嫌になったのかと思った。
それはそうだ、だからいなくなるのは当然だ。
それなのに、彼の口から俺が思っている事とは違う事を言われた。
俺が都合よく聞いた幻聴なのかさえ思った。
俺なんかと居ても楽しくないと思い断ろうとしたら、力なく下がっている手を取り強制的に握手をされた。
久々に人と触れ合った。
驚くほど手が暖かく、驚いて手を引っ込める。
失礼な態度を取ってしまったと恐る恐る少年の顔色を伺うが不快になった顔はしていなくて笑っていた。
…ずっと笑ってる子ほど何考えてるか分からなくて怖かった。
そんな自分は少し人間不信なのかもしれない。
でも、今まで会った事のないタイプで…もし友達になれたら俺も変われるかもしれない。
「よしっ!これで僕達友達だね、僕の名前は岸《きし》風太!よろしくね」
「…桃宮、和音」
「もも?…じゃあももちゃんだ!」
不意打ちの事で驚いてビクッと震える。
岸くんは俺の異変に気付き心配そうに顔を覗き込む。
俺は顔面蒼白で身体が震えて怯えていた。
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