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「だが、あんまりあの人に心配かけるなよ。死んだようなお前をずっと温めてたのはあの人だ。よほどお前よりも痛そうな顔をしてたからな」
それを聞かされるとランバートは申し訳なくなる。
ジンが船でランバートを運び出してくれたのは知っている。カロンの道を進む間ずっと、ファウストは自分の上着でランバートの体を包んで大事に抱いていたらしい。これ以上体温が下がるのは危険だから、温めてくれていたのだと。
情のあるあの人がどんなに辛い思いをしたか、それを思うとやはり申し訳なく、そして苦しくも感じるのだ。
「ランバートさん、そんなに気にしないで。ランバートさんだって、考えあっての事なんだから。それに兄さんが過剰に反応することだってある。何より過ぎたことで、もう終わってるでしょ? 気にして縮こまったりしなくても大丈夫だし、兄さんには勝手に心配させとけばいいんだよ」
「やっぱりルカさんは、強いな」
思わず苦笑したランバートに、ルカは輝くような笑みで「まかせて」と言った。
「さーて、リフ。お前これだけが目的じゃないだろ」
じろりと睨むようなジンの視線に、ランバートはギクリと肩を震わせる。そして苦笑し、「ばれた?」と恐る恐る言ってみた。
「俺に詫び入れにくるなら、一人で来ただろうよ。この人を連れてきたってことは、なんかまたあるな」
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