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友人はいい奴だった。ランバートをスラムで認めてくれた人物で、彼がいなければジン達と上手くやれていなかった。ランバートはそんな友人を心から信頼し、心から友だと信じた。
そんな人を殺された。この事実はランバートの中でずっと消えず色褪せないまま燻っている。
「ランバートさん、この件を兄さんに報告していいから、ランバートさんは降りて」
「え?」
隣のルカがギュッと手を握る。とても心配そうな顔で見上げるから、色々と驚いてしまった。
「ランバートさんは今、騎士団にいるでしょ? でもその人の事も許せないでしょ? 問題が起こって、もしもランバートさんがその人を殺すような事があったら、騎士団にいられなくなる。違う?」
「……」
違わない。ランバートは言葉を無くしてしまう。
よほどの正当防衛じゃなければ、相手を殺す事は許されない。テロや戦争は別として、私刑は明らかに違法だ。軍法にかけられ、退団や刑務所なんて事になる可能性が高い。
ルカはとても心配そうだ。それこそファウストがあれこれ過保護にすることよりも、ランバートの身を案じてくれている。
くしゃりと笑って、ランバートは首を横に振った。
「平気。流石に俺も考えるから」
「でも…」
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