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夕刻、ルカの様子を見に店に行くと随分楽しげな声が響いていた。
裏口の戸を叩くと、のぞき戸から青い瞳が覗く。だがその瞳は切れ長の、宝石のように深みのある青い瞳だった。
「ランバート?」
「ファウスト様ですか。どうぞ」
ふわりと穏やかな笑みに瞳が柔らかくなり、続いて錠が外れる音がする。そうして招かれた室内は、前日の事件など思わせぬ賑やかで温かな光景だった。
ベージュのエプロンをつけたルカがキッチンに立ち、料理をしながらファウストに「来たの?」と苦笑する。
迎えたランバートも黒いエプロンをつけて腕をまくっている。料理をしていたのがうかがえた。
そしてもう一人、見た事の無いオレンジ色の髪をした少年がキッチンとテーブルの間を往復している。皿やグラスを運び、出来た料理を並べている。
突然入ってきたファウストにも驚くことなく明るい笑みを浮かべて頭を一つ下げ、それでも仕事の手を止めていない。
「もう少しで食事ですから、座って待っててください。レオ、もう一人分食器の用意」
「はーい」
嫌な顔一つせずに楽しげに働く少年がファウストの前に立ち、テーブルへと案内する。そして素早く皿やグラスを用意した。
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