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「今回の案件の黒幕とおぼしき男の名です。ブルーノ・シーブルズという男を追ってください」
「どこからの情報だ」
「レオです。花街の娼婦達の荷物持ちをしている間に聞いたようです」
「間違いないのか?」
「俺も日中少し聞いてまわりましたが、間違いありません。引き抜きをしていた店の店主の名がブルーノでした」
ならばほぼ間違いなくそいつだ。これをアルダスに伝えればより迅速に事態は進んでいく。そう思うとほっとはする。
だがそうも言っていられないのがランバートの放つ雰囲気だ。何かあったのかと思わせるただならない空気に、ファウストの視線も自然と険しくなった。
「何かあるのか?」
「いえ。ただ、ルカさんを悩ませたり、危害を加えようという奴が野放しでいるのは気にくわないと思うだけです」
静かに言って瞳を閉じ、冷たい空気を内に収めたランバートの口を割らせる事は簡単じゃない。それを感じたからこそ、ファウストはそれ以上問わなかった。
それにしても、ブルーノ・シーブルズ。どこかで聞いた事のある名だ。
だが引っかかりを感じるばかりで、答えは出ない。なんとも気持ちの悪い感じだった。
ランバートの門限前に店を出て、人通りの少ないウルーラ通りを進む。その間に、ファウストはもう少し話を聞いていた。
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