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「あまり悲観的な事ではありませんよ。まぁ、そうする事で自分を守ってきたのも否めませんが。でも、ルカさんのことは本当に好きなようです。昨日の今日でもうあのように嬉しそうにしていましたから」
思い出したようにランバートは笑う。とても嬉しそうに、気遣う兄のような表情で。
「笑顔の多いレオですが、感情がないわけじゃないんです。嫌いな相手や苦手な相手に向ける笑顔と、好意を持っている相手に向ける笑顔は違うんです。ルカさんに向ける笑顔は本当に嬉しそうです」
「ルカも楽しそうだったな。弟ができたような感覚なのかもしれない。あいつも世話好きというか、面倒見がいいからな。あのレオという少年も変に遠慮しないのがいいのだろう」
「俺としては、ルカさんが嫌じゃなければ事件の後もレオをお願いしたいんですよね。あいつは仕事を選びませんが、花街で男は生きづらい。特に年齢があがれば。だからこそ、契約も一年で一度終わり、次の契約まで時間を空けられるんです」
ランバートの気遣わしい表情からも、あの少年を案じていることが窺える。
そしてファウストも悪くない話に思えるのだ。ルカもずっと一人だから、誰かが側にいれば楽しいだろう。弟子をそろそろ作ろうかとも言っていたし。
やがて西砦へと到着し、ランバートが去って行く。宿舎に戻るまでの道すがら、ファウストの中ではまだ小さな骨が引っかかったような感覚が取れずにいた。
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