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この事件は未だ解決していない。否、解決のしようがない。
現場はあっても死体がなく、証拠がない。
過去に何人かが犯人として聴取されたが、どれも動機があっただけでそのような事が出来る人物とは考えられなかった。
そしてこの事件で最も疑わしいと言われたのが、ロト・ヒンスだった。
当然聴取されたが、騎士団にやってきたのは品のいい杖をついた老人。確かに彼がロトであった。戸籍などを改めても、それは偽りがない。
あの事件が老人によって行われたなんて誰も思わなかった事で、早々に容疑者から外れた。
だが、違うのだ。あの老人はその名と戸籍を貸し、表に出る時だけそのように振る舞っていたに過ぎない。あの老人の裏にいたのは…。
「状況が、今回の事件と似ておるの」
「え?」
ドキッとして、ファウストはシウスを見る。真剣な面持ちのシウスがファウストの手からファイルを取り上げ、側の椅子に腰を下ろす。
「被害者とおぼしき者達の親が行っていた悪行は、そのまま現在西地区で行われている悪行と重なる。このブルーノという男が行っているのであれば、親を真似たか」
「シウス」
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