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ファウストは知っている。
今は更に力をつけたが、入団直後でもランバートの剣は鋭く正確だった。動きは柔軟で、複数相手でも十分に立ち回れた。
ファウストは知っている。
ランバートが持つ暗い殺気。それは情のある人物が被害に遭うと発せられる。ロッカーナで感じた底冷えのするような悪寒は、歴戦の騎士でも尻込みする不気味さと暗さがあった。
ファウストは知っている。
ロトという人物はランバートと密接であり、ランバートを助けるような人物が複数いて、たとえ犯罪でもそれに手を貸すだろうこと。
ランバート一人にこれだけの事件が起こせたとは考えられない。実行したのはあいつでも、それだけの死体を運び出す事は容易ではない。
ジン達が手を貸した可能性は高い。転がった死体を運び出し、現場を水浸しにする事で証拠を消した。人数がいなければ迅速にはできない。
スラムの暴行死。それを解決できなかった国の責任は重い。耐えかねてやったのかもしれない。
「…だめだ」
考えれば考えるほど、これが正しいと思えてくる。全ては推測だ、何の証拠もない。所詮は動機があっただけ。実行しうる力はあっても、実行したと断定する事はできない。
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