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ファウストの弟
頃は四月の末日。安息日の今日、ランバートはいつもと同じようにファウストと早朝の手合わせを終えていた。
「?」
なんとなく感じていたが、今日のファウストは様子が違う。おそらく何らかの心配事があるのだろう。眉間の皺が寄っている。
だが周囲の師団長にも団長達にも変わった様子はないから、他に話す事がはばかられるのか。
「何か、困った事でもありましたか?」
溜息をついて軽く笑い、それとなくランバートは聞いた。向けられた視線が、困ったように細くなる。そして珍しく、大きな溜息をついた。
「個人的にな」
「個人的?」
思わぬ言葉に少し驚き、ランバートは問い返す。ジッとランバートを見たファウストは、そのままどっかりと修練場に腰を下ろした。
「俺の弟が王都で仕事をしているのは、知っているな?」
「えぇ」
ランバートは素直に頷く。
ファウストはシュトライザー公爵と愛人の間の子で、シュトライザー家に入った。だがその下に実弟と実妹がいる。この二人はシュトライザーの家に入っていないという。あまり知られていない話だ。
そしてその弟は現在、王都で調香師、つまり香水を調合する仕事をしている。
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