最後の夏

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教科書はロッカーにあるから、 鞄なんてそう重くないはずなのに 鉛が入っているように重く感じる。 それも、憂鬱な気分のせいだ。 駅から少し歩いて、学校の門をくぐる。 同じ制服を着た何人もの人が、僕を追い抜かしていく。 僕が、歩くのが遅いからだろうか。 皆が、行き先を見据え、急いでいるからだろうか。 昔からそうだ。 僕は、誰かが前を歩いていくのを見送り、安全でわかりやすい道を選んできた。 僕にとって進路は、進む道ではない。 進める道だ。 この重い鞄の中にある進路についての資料や提出するもの全て、 開いてもいないし、何も書いていない。 そろそろ何でも良いから書かなければ。 そんな事を思っているうちに、教室に着いた。 教室にはもうクラスの半分ほどの生徒が居た。 友達と話している者や、座って携帯をいじっている者、寝ている者や、小説を読んでいる者。 僕はこの三番目に該当する。 自分の席に着くなり鞄を置いて、腕を枕にして僕は眠りについた。
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