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二章 夜明けの演者
二章 夜明けの演者
1 劇団の毎日
♪
「神よ聞け! 我が名はフィラ・フィア、封神の七雄なり!」
「ちょっとストップ! フルージア、手をさ、もっと勢いよく振るんだ。キレがない」
「了解しました! っと、あの時はアドリブだったけど……。案外難しいのね、演じるのって」
それから数日。フルージアは劇団のみんなから劇の手ほどきを受けていた。
「じゃ、もう一回やるわね。――神よ聞け! 我が名はフィラ・フィア、封神の七雄なり! ……これでどうかしら?」
「オーケーオーケー! やっぱり君は筋がいいね! 教えるのが楽しいよ!」
「お褒めにあずかり光栄ですわ。っと、もうこんな時間。休憩にしません?」
フルージアが提案すると、皆嬉しそうに頷いた。
劇団に入ってまだ日は浅いが、ある程度のメンバーの名は覚えた。
奥で忙しそうにしているのが団長のウォルシュ。その隣で作業を手伝っている、気の強そうな少女がその娘のルーシュ。いそいそとお盆に乗ったおやつを運んできたのがルルカ。
どこにも居場所のなかったフルージア。でも、今は居場所があるから。とても幸せで満ち足りていた。
「焼き菓子を作ってみましたよー。冷めないうちに召し上がれ」
ルルカの言葉にみな我も我もとお菓子を取り合う。
穏やかな光景だった。
「はい」
小皿に乗ったクッキーが差し出された。フルージアは礼を言って受け取る。
「群がっている人たちはほっときますねー。わたしが直接配るのは、そうしない人だけ」
いたずらっぽく微笑む彼女は料理が得意。劇場には料理をつくる設備なんてないのだが、彼女の家は劇場から近く、時々こっそり抜け出してはこういったものを作ってくれる。
彼女はフルージアにお菓子を配り終わると、お菓子の皿を持って、ウォルシュとルーシュの方に向かっていった。
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