第一部 アスフィラル劇団 序章 フルージアの初舞台

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第一部 アスフィラル劇団 序章 フルージアの初舞台

 序章 フルージアの初舞台   ♪  生まれた時から一人だった。傍には誰もいなかった。覚えているのは名前だけ。フルージアという名前だけ。ずっと一人で生きてきた彼女は昔から、「演じる」ことだけは得意だった。  そんなある日、セラン王国のカウィダという町に足を踏み入れた彼女は運命に出会った。 「皆様、皆様! まもなくアスフィラル劇団の公演が始まります! 演目は『封神の七雄』! フィラ・フィアと荒ぶる神々の物語! 飛び入りでも構いません、皆様どうぞご覧下さーい!」  前々から劇が大好きだったフルージア。劇はそこの劇場でやっているらしい。フルージアは迷わず場内に入ると、居並ぶ人々を押しのけて最前列に陣取った。  やがて劇は始まる。  演目は「封神の七雄」。遥か昔、「荒ぶる神々」が地上の人間たちをしいたげていたころ。「舞師」フィラ・フィアをはじめとする七人が、彼らを封じんがために立ち上がった物語。正史ではフィラ・フィアは戦神ゼウデラだけは封じられなかったというが、劇ではすべて封じられたことになっている。正史はあまりにも報われない物語なので、劇のためにシナリオが手直しされたのだ。  「崇高たる舞神」フィラ・フィア、「自在の魔神」エルステッド、「白蝶の死神」シルーク、「陽光の破神」ユーリオ&「清水の封神」ユレイオの双子、「天駆ける剣神」ヴィンセント、「奔放なる嵐神(らんしん)」レ・ラウィ。彼らを合わせて「封神の七雄」という。  それはとても有名な劇だから、フルージアは何回も観たことがある。それでも飽きないのは、それが正史に基づいた、めくるめく人間ドラマだからだ。  フルージアはわくわくしながらも、劇に見入り続けた。
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