ヤケクソで神社にクリスマスプレゼントをたのんだら――

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 スマートフォンを持ってこればよかったと、暗闇に顔をしかめる。ライト代わりに使えたのにと悔やんでも、取りに戻る気はなかった。急いで出たので、鍵すらもかけ忘れていた。その上、寝間着にダウンジャケットという格好だ。暗闇のなかで気づいた壮太は、ニヤリとした。それほど必死に、自分はタクローを求めている。  そんなに広くはないから、手探りでなんとかなるはずだ。はやく見つけて、マンションに帰ろう。  足跡が残ってもかまうもんかと手を伸ばし、ホコリとカビの匂いに満たされた空間で鏡を探した。これだけ手入れをされていないのなら、侵入者がいたって気にされたりはしないはず。  指先にコトンと硬いものが触れて、壮太はそれを両手で撫でた。つるんとした表面と、まるい形。直径十五センチほどのおおきさの、平たいものが台座に置かれている。  きっとこれだと持ち上げて、胸に抱えた。  外に出て両手で空にかかげると、うっすらと神社に差し込む外灯の明かりを受けてかがやいた。間違いなく鏡だとホッとして、大切に抱きしめてマンションに戻る。 「あ」  鍵をかけ忘れたということは、マンションのオートロックの鍵も持って出ていないということだ。 「やべぇ」     
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