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「いえ自殺ではないですね」 「断定的ですね、そうなんですか」 「そうなんです」   「なるほど、なるほど」 「ときに倉知先生は何か問題のある方だったんですか」 「最近いるじゃないですか。先生のくせして女生徒に手出したりする教師が」  「うちの親戚には先生と女生徒の関係から結婚してる夫婦がいますが何か?」 「いやいやそんな真面目なのじゃなくて、あのロリコンっていうんですか」  「ウラジミール・ナブコフの「ロリータ」は読んでます。素晴らしい作品です。お薦めします。キューブリックの映画版もいいですよ」  「いえ私はそういうのは。年上が好きなものですから」  「そのもう一人の発見者の方はどこにいらっしゃるんですか」   「ああ、寺田先生なら一旦帰られましたよ」  「さようですか。ではまた後ほどお伺いします。ごきげんよう」  「あ、はい ごきげんよう…」  越前屋はベルトに細いチェーンで繋れた懐中時計を出して時間を確認した後、被っていた年代もののハット帽のつばを下げ、さっと背中のマントを翻し、寺島に背中を向けて去っていった。     
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