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序章 月下の剣戟
ある満月の夜、その音は聞こえた。
街外れにある大きな森の深くの開けた場所で、鉄と鉄が互いに叩きあい交差する音。剣戟の音だ。
男性で十代後半の青年と思わしき二人は手に持つ剣を交差し合わせていた。
片方の青年は左右に剣を持っている。その刀身は月光でキラリと光る。
対してもう片方の青年は両腕伸ばさないと測れないほどもある大剣を持っている。しかも片手で。
双方の瞳が交差する。
「お前は、なんでそんな弱くなっちまったんだよ」
「...弱くなってなんか...!」
双剣士は左右の剣に力を込める。その額には一滴の汗。一歩後ろに足をつく。が、大剣士はそれを軽々と弾く。
「いや、弱くなっている。前のお前なら俺にこんな簡単に弾かれたりしない」
「ッ.....」
双剣士は後ろに飛び退いた。そして、口を引き締め疾風の如き疾さで大剣士へ迫る。
それは下から大剣で上に弾かれる。
「この速さもだ。前より格段に遅くなっている。お前も気づいているはずだ」
「くっ.....!」
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