序章 月下の剣戟

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 そのまま炎の壁へ突進する。炎を蒸発させるはずの水──そもそも人が焼き付きるほどの炎なんて蒸発出来ないだろうが──は炎を弾く。そうして、大剣士は壁を突っ切り双剣士の前へ現れた。 「こんな炎生温い!」  そして、力一杯込めた大剣を繰り出す。それはバチバチと迸(ほとばし)る輝きを纏う。  だが、こうなることを予測していたのだろう、双剣士は落ち着いて左右の剣を交差させ大剣の重みを二つの剣で受け止めた。剣は一層輝きを増す。  キィィィンと剣と剣の弾き合う音が暗闇の森の中に鳴り響いた。 「流石に少しはやるようだな」  大剣士は賞賛の言葉を双剣士へかける。そう言いながら剣への力は緩めない。 「まだだ!」  そう言って双剣士が再び詠唱をしようとしたその時、森の奥から高さ三m、全長は六mはあるであろう猪のような形をとる、生物を喰らい、大地を破壊し、人類を滅ぼす獣──魔獣が現れた。 「な、魔獣だと!何故こんなところにいるんだ!」  双方とも魔獣の姿を見るとすぐに魔獣から遠のいた。ぽっかりと空いた空間に突如どっしりとした威圧感をもつものがいきなり現れる。 「ちっ、あれはクラスB相当の魔獣だな。だが街外れの森に何故。少し深くだからと言ってここは圏内のはずだ」  双剣士は剣を構え直すと舌打ちしながらそう言った。  大剣士は魔獣を少し観察すると1秒ほど俯き、双剣士へ忠告した。     
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