第1話

4/50
1664人が本棚に入れています
本棚に追加
/338ページ
そこへ電話が鳴った。 上司である編集長、豊川大輔からだった。 「はい。もしもし」 彼女は食事を邪魔された事に少し苛つきながら電話にでた。 「おはよう。今日は10時から会議だから解ってるね?」 「おはようございます。はい。承知しております」 「そうそう、それからね、今度は『不倫』について大々的に掘り下げるから君も色々取材を頼んだよ」 「え?また『不倫』ですか?それってもう陳腐じゃないですか?今更わざわざテーマにしなくてもそこらじゅうに溢れてますし……」 「うん。不倫した事がない君には『陳腐』かもしれないけど、売れるんだよね。必ずさ。だから、頼むよ。君も、たまには『不倫』して、ネタをとってこいよ。『本気の不倫』なのか、『遊びの不倫』なのかによっても、内容が変わってくるけどね」 「はい」 「もしかして俺の事、馬鹿にしてる?」 「いえ……」 「軽蔑した?」 「少し……」 「だから君は青いんだよ。ラブホテルに1日潜入して取材して来いよ」 「そんなの無理ですよ」 「じゃあ今夜俺と泊まるか?」 「結構です」 彼女は思いっきり電話をブチッと切った。
/338ページ

最初のコメントを投稿しよう!