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そこへ電話が鳴った。
上司である編集長、豊川大輔からだった。
「はい。もしもし」
彼女は食事を邪魔された事に少し苛つきながら電話にでた。
「おはよう。今日は10時から会議だから解ってるね?」
「おはようございます。はい。承知しております」
「そうそう、それからね、今度は『不倫』について大々的に掘り下げるから君も色々取材を頼んだよ」
「え?また『不倫』ですか?それってもう陳腐じゃないですか?今更わざわざテーマにしなくてもそこらじゅうに溢れてますし……」
「うん。不倫した事がない君には『陳腐』かもしれないけど、売れるんだよね。必ずさ。だから、頼むよ。君も、たまには『不倫』して、ネタをとってこいよ。『本気の不倫』なのか、『遊びの不倫』なのかによっても、内容が変わってくるけどね」
「はい」
「もしかして俺の事、馬鹿にしてる?」
「いえ……」
「軽蔑した?」
「少し……」
「だから君は青いんだよ。ラブホテルに1日潜入して取材して来いよ」
「そんなの無理ですよ」
「じゃあ今夜俺と泊まるか?」
「結構です」
彼女は思いっきり電話をブチッと切った。
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