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俺には基本、休日というものがない。月・水・金・土曜日はバイトが入っているし、平日もほとんど大学の講義で予定が埋め尽くされてる。日曜日はようやく力が抜ける……と思いきや、いつも俺は×××や***から呼び出される。「本屋に付き合いなさい」やら「合コンのメンバーが足りない」やらどちらも俺には何の得もない。
今日は×××からの呼び出しだ。行きたくはないが、断ればあとが怖い。ということで俺は×××のご機嫌を取るべく、重たい足を引きずるようにして駅へ向かったのであった。
駅のベンチに座っていた×××は、何やら考え込んでいるようだった。こういう時の彼女は、たいてい面倒くさいと相場が決まっている。自分の質問に納得できる答えが返ってこないと、再び考え込んでしまって非常に面倒くさい。
「来ていたのなら声をかけなさいよ」
彼女もこちらに気がついて文句を言いながら近づいてきた。
「君が何か考えている様子だったから俺なりに気を使ったのさ」
「馬鹿ね。そういう時は、どうしたの? とか、相談乗るよ? とか言うのが女性に対する一般的なマナーじゃない」
今日は一段と喋るんだなぁ。
「わかったよ。それで、どうしたんだい?」
「ファミレスにでも行きましょう。賑やかな所の方が話しやすいわ」
俺はコーヒーを奢ってもらうことを条件に、ファミレスへ向かうことにした。
休日であるため人が多かったが、おそらくそれに紛れて話がしたいのだろう。注文したコーヒーとミルクティーがテーブルに並べられると、ようやく今まで黙っていた×××が口を開いた。
「あなたは人を殺したいと思ったことはある?」
驚いた。いきなりそんなことを聞いてくるなんて。
「君には俺がそんなにサイコパスに見えるのかな?」
「真面目に聞いているのよ」
「俺は君とは違って、死というものに興味はないね」
「そうね。それもそうだわ」
そういって彼女は、自分の左手の手の甲にある小さなホクロを右手の指先で触り始めた。言いたいことがあるのに言えない。そんな時の彼女の癖だ。
ようやく決心がついたのか、彼女は左手から右手を離して俺にこう聞いてきた。
「それは、殺す過程には興味がないということ?」
俺はその質問に答えることが出来なかった。
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