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「形代さん。一目見た時から、好きでした」
「……っ!」
形代メイと呼ばれる彼女は、眼の前の現実に停止する。
(なぜ、こんなにも、信号が乱れるのだろう)
メイが、告白をしてきたクラスメイトの想いを受け入れるなど、ありえないことだ。
彼女にとって人間の告白は、サンプルデータの一つに過ぎないのだから。
――型式:D-0034Tと呼ばれる、人間型のテストアンドロイドである、彼女にとっては。
周囲の全てが、観察と分析の、対象に過ぎない。
だから、これ以上関わることのない彼の告白は、断るだけで終わりの一データにすぎない。
……それだけに、すぎないのに。
(答えなんて、決まっているのに)
形代メイは、添継充(そえつぎ みつる)への返答を、ためらい続ける。
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