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※※※
――彼の後ろ姿が気になったのは、人間で言う、気まぐれに判断される。
(人気のない、校舎の奥。……私を見る理由は、なぜか)
添継充というクラスメイトは、転入してきた初日から、メイのことを遠巻きに見ている時があった。
それは、他の視線と同様かと想っていたが、メイの思考回路は異なるものだと判断した。
人間で言うなれば、それは、直感に近いのだろうか。
(彼は、いつも独りで消えていく)
追いかけているのも、その直感に従ってだ。
――研究所からの、帰還命令は出ていない。まだ、許容範囲の振れ幅ということだろう。
彼の後を追うメイと、すれ違う人々。
感心するように彼女を見つめる瞳と、記録された充の眼は、やはり、どこか違うように感じる。
(その違いを捉えることも、テストの一環)
――人間達とのコミュニケーションをテストするため、秘密裏に行われている、アンドロイドの運用実験。
その一体に含まれる彼女の全ては、今後の発展のためにある。
(……寂れた部屋、ね)
彼が入っていった部屋の前に立ち、老朽化した扉を観察する。
こんな場所でなにを、と、メイが思考した時。
――ガシャン! という大きな物音と、男の叫び声。
事故かと判断したメイは、状況を確認するため、扉を開ける。
滑りの悪いドアが開き、その部屋の中で、メイが見たものは。
「形代、さん? どうして、ここに」
分厚いマニュアル片手に、金属のパーツを拾い集める、充の姿だった。
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