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「これで動くはずなのにな」
分厚い参考書を片手に修正しながら、何度も試行錯誤する。
うまく動かないことに悲鳴を上げながら、なのに、楽しさに満ちている。
(……変わった人)
メイの視界から観察する研究者達は、この事態をどう見ているのだろうか。
情熱的。まっすぐ。
なのに、見当違い。
そんな対象と、自分が触れあっていることに。
「どうするかな……」
充の独り言に、想わず、メイの口が反応する。
「それでは、動かない」
驚く充の眼に、メイは、答えなければいけないと判断した。
近寄り、彼の手元にあるタブレットを借り、そのプログラムを少し書き換える。
「……う、わっ! すごい、スムーズに動く!」
メイの書き加えたプログラムに、充は小躍りし、彼女の両手を握る。
「ありがとう、形代さん! ……っ!」
次の瞬間、恥ずかしそうに謝りながら手を離して、充は鼻をかく。
「ごめんね」
「大丈夫。たいしたことではないし」
「そうだ!」
叫ぶと同時、充はまっすぐにメイを見つめた。
「形代さん、同好会に入ってくれない!?」
――力強いその瞳と言葉に、なぜかメイは、否定の判断を行うことができなかった。
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