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※※※
研究所は、充との接触を了解した。
むしろ、今まで冷めた判断しかしないメイが、初めて人間に興味を持ったということで、研究所内は歓迎ムード一色だった。
(……なぜだろう。割り切れない)
人間で言うわだかまりが、こうした感情なのだろうか。
そうは想いながらも、メイは充と出会うために、放課後の教室へと通い続けた。
――充は、不思議な少年だった。
(過去のデータと、不一致な部分が多い)
メイは、転入前にインプットされたデータから、彼のことを検索した。
データにある彼は、優秀ではあるが、どこか冷めたところがある人物だった。
クラスメイトに聞けば、かつては『人形』と噂されるほど、表情のない人間だったという。「昔はね、出す必要を感じなかったんだ。今は、冷たかったかなって、想うけれど」
なぜそんなに楽しそうなのか、という問いへの返答が、それだった。
「ロボット同好会を作ってから、見方が変わってね」
メイのサポートでロボットの完成度を増す毎に、充の情報もまた、メイの中に蓄積されていく。
最初は周囲も戸惑っていたが、『人形』だった充の変化に興味を持ち、手伝ってくれた。
だが、次第に複雑な作業と手間がかかることに気づき、脱退していったのだという。
「だから、形代さんが手伝ってくれて……本当に、嬉しいよ」
「……そう」
冷めた手つきで、メイは彼のプログラムや設計の手助けをする。
(自己学習にしては、よくできている)
メイの分析も、研究者達の感想も、同じものだった。
だからこそ、割り切れない。
「どうして、この学校で造るの。ここは、そうした環境にはないのに」
メイは彼に、そう問いかけていた。
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