1人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ
産まれたのは皇都でも、育った場所がこんな田舎じゃ、多少、ちょっとは、
野生に戻る。
仕方ない。
父親がキイズの当主、母親が今上(今の王様)の妹で血統が良くても、毎日泥まみれになってれば、多少、ちょっとは、
野蛮になる、いやいや、わんぱくなだけです。
「おやびん、独り言多いです」
「誰がおやびんだ」
どっちかっていうと小瓶だ!
「独り言じゃないよ」
これは、
「社会への意見を言っているのだ」
「へええ」
「ピンには難しいかもな」
「あ、かっちーん」
「今、好感度下がりましたよ」
みなさーん、みなさーん!
「ここにいる、キイズの姫、カシリアっていう人は」
「人を簡単に見下す人です!」
「ひどい人です!」
ピンは叫ぶ。
と、ピンは気づく。細身のすらりとした10代の男性が立っている。
「うるさい、ピン、腹でもへったか?」
「うわ、きったなっ!」
現れた男性の足元は泥まみれで靴とズボン裾の境目が分からなくなってる。
「コンコルド、食べ物ならあるぞ」
カシリアが自分の荷物から布に包んでまだ温かいおにぎりを差し出す。
「お、姫、サンキュー」
コンコルドが丁寧に両手を合わせていただきますをするのを、カシリアはぼんやりと眺める。
こんな田舎でも、ちゃんと野生ぽくもなく野蛮ぽくもならずに育つヤツもいるのに。
最初のコメントを投稿しよう!