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母とあたしは、性格的に合わない。
これまでに何回かは顔を会わすことはあったけれど、なんか、興味ないってのが顔に出てて、はっきり言って嫌い。
大人げない母に合わせるにはまだ、自分は幼いし、母は元気な子供の声に煩らされるのは苦痛だったのかもしれない。
だったら産まなきゃ良かったのに。
ばっかみたい。母親のくせに。
反抗期に入ったあたしは、自分の世界から完全に母を消した。屋敷は広く、ばったり会うことはない。
去年の夏、皇都から父が来たとき、あたしはちょうど泥まみれで、台所から適当に食べ物を持ってきて部屋でくつろいでた。
「カシリア、か?」
およそ、姫ではない。所作も服も何もかも。
「なんだ、その髪は」
髪飾りはひとつもない、無造作に括られてて、少しパサついてる。
「どこでそんな泥を」
汚れた絨毯は、すみに追いやられて丸められている。
「なんだ、これは、どういうことだ?!」
母親や乳母、使用人は父親にどういう報告をしていたんだろう?
「とにかく、カシリア、一緒に都に戻ろう」
「えええええ?」
「絶対、イヤ」
父親にとって、あたしはかわいい娘、かどうか、わからなかった。
「ちゃんと学校行ってるんだから、問題ないでしょ?」
どうせこんな田舎モン、都に行ったって、バカにされて、無視されて、部屋にこもるようになるだけだって、と説得して今に至る。
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