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「『クリスマスイブだってのに、恋人とデートしないでどうすんの!』って。」
先日お邪魔したときの彼のお母さんは、『息子2人で娘がいないから寂しかったのよー』と明るく喋る、気さくな人だった。
体を壊して早くに退職したけど、若い頃は幼稚園の先生だったと聞いている。
「『親より奥さんになる人を優先させなさい。お父さんも昔、そうしてくれたわよ』って」
―――、・・・は?
「・・・・誰が、『奥さんになる』の?」
「え、っとぉ・・・・」
男はコートのポケットから小さな小さな箱を取り出した。
「昼間は、その、・・・・なかなか言い出せなくて、」
動けずにいる私の前で、いたたまれなくなったように彼が腰を落とし、膝を突いて私を見上げる。
「小野谷綾花さん、俺と、結婚して、ください」
私の顔を伺いながら、ゆっくりとそう言うと
小箱からビロードのケースを取り出し、私の手を取ってソレを持たせる。
そうして置いて彼が蓋をあけると、
キラキラと輝く石を戴いた指輪が現れた。
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